採用試験官として任命されたときの候補者の見極め方

採用試験官を引き受けよう

あなたの上司があなたの机まで来て、面接に出てほしいと言ったら、あなたはイエスと答えるだろうか。やめてほしいと思うだろうか。

あなたがもし、3ヶ月以内の退職を決意しているのであれば受ける必要はないが、そうでないなら是非受けた方がよい。あなたにとってもたくさんのことがプラスになる。

あなたは口下手なことを気にしているかもしれないが、面接を受ける候補者はもっと気にしている(あなたもかつてはそうだっただろう)。

あなたにとってのプラスはなにか

何故上司はあなたを試験官に任命したのだろうか。あなたがたくさんの同僚に指示を出しているから?あなたの書くコードがイケてるから?

もっとシンプルに、上司はあなたのチームを作らせようとしている。もちろんチームリーダーはあなただけではないかもしれないが、チームの重要な一人であることは間違いない。

そしてもうひとつ、あなたにとっての大きなプラスは、働く人を選べることだ。例えば、あなたが合わない!と思う人が来た時、あなたは反対票を投じることができる(もちろん叶うとは限らないが、あなたは意思表示ができる)し、逆にあなたが好ましいと思う人物に賛成票を投じることができる。

そしてもうひとつ、あなたはあなたの企業がつける技術の値段を知ることができる(かもしれない)。スキルが大変優秀で、性格も良さそうな彼が何故採用されないかというと、企業の用意する予算と彼の希望が合致しないからだ。もちろん上司もあなたに候補者の希望金額がバレるようなヘマはしないだろうが、あなたが採用面接の場にでて、その数週間後に職場で会うかどうかで、大体の傾向はわかるだろう。

他の試験官は誰?

同席する試験官は誰だろうか。あなたを任命した上司が同席するなら、あなたは上司のチームのある部分(おそらく開発業務)の担当者として参加する。あなたと人事担当者の二人なら、あなたは部署や開発者全体の代表として、候補者を判断する。

もしあなた一人なら……上司はあなたにとんでもなく期待しているか、あなたに人事担当者としての役割を担わせようとしている(ベンチャーにおいてはしばしばあるが、適切ではない選択肢だ)

面接に望もう

面接にあたり、あなたが用意するものはあまり多くない。

朝、清潔なワイシャツを選ぶことと、お昼にニンニク料理を食べないことくらいだ。あとは、いくつかの質問メモとラップトップを持って、会議室に向かおう。

会議室には、やや恐縮した昔のあなたがいるだろう。もしかすると、まだあなたが来ないと思い、ヘッドレストに頭をつけて寄り掛かっているかもしれない。軽いノックでドアを開けて、笑顔でようこそと言おう。

面接で何故質問するのか

前節で質問メモについて触れなかったのは、正直に言ってあまり意味がないことだからだ。質問はこんなことを聞くだろう。

  • あなたは前職でどんな役割でソフトウェア開発に参加していましたか?
  • これまで直面したソフトウェア開発での課題とその解決法を教えてください
  • あなたが親しんでいる開発手法はアジャイルですか、ウォーターフォールですか
  • あなたが実施して良かったテストプロセスについて、実例を交えて教えてください
  • あなたがソフトウェアの設計を行う際に、何を重視して設計を行ったか教えてください
  • 他の従業員と相入れなかった際に、どのように解決しましたか

きっと候補者は、昔のあなたと同じように前職での経験を話し、少し目を輝かせてあなたがいま使用しているツールを紹介し、またいかに優れたそしてシンプルなコードを書いてきたを話してくれるだろう(彼もまた、昨日の晩にしっかり練習したのだ)。

彼がつつがなく質問に答えて、あなたはすべての質問項目に、良しと記すだろう。だが、それで終了して良いのだろうか。

文化は一致するか

新たな仲間(それもあなたのすぐ近くに座るかもしれない)を迎える上で、技術力以外でもう一つ大事なのことは、相性だ。

まずあなたとの相性、あなたの所属するチームとの相性だ。相性を決めるのはなんだろうか。Macintosh派かLinux派かWindows派かだろうか。それとも選んだ車のメーカーだろうか。相性を決めるのは文化で、文化を作るのはその人が過ごしてきた背景だ。

文化を知るには、あなたの文化や企業の文化を説明する必要がある。例えばあなたの会社でチームの仲間同士はどんな関係だろうか。プライベートで頻繁に遊ぶ?一緒にランチ食べたり、お酒を飲む?またはあまり付き合いはない?あなたの企業はどんな企業だろうか。ソフトウェア開発者に一日のノルマが割り当てられていて、その達成をマネージャが監視している?それともあなたは普段在宅勤務をしていて今日は4日ぶりの出社?

あなたは飾らずに素直に事実を話せばよい(当たり前だが、愚痴を言ってはいけない)。そして、話しながら相手の反応を見るのだ。あなたが、最近行った長時間労働の話をしたときは?あなたの会社の福利厚生について話したとには?

もしあなたの上司が、文化について話すことを必要ないと考える人なら、候補者に対して、あなたのことを知りたいので教えてほしい、と前置きしてから話そう。上司の手前、後ろ向きなことは言いづらいかもしれない。そんなときは自社の事実と、候補者への質問を混ぜることだ。私たちの会社では先週はこのくらい仕事をしたがあなたはどうか?と聞くのだ。質問を投げるのは、定型的な質問(つまり質問メモの内容)が終わってからがよいだろう。質問にすべて答えられた安心感から、彼もほっとして少し落ち着いて答えてくれるだろう。

採用責任は誰にある?

採用した人間が(あなたのように)優秀なら、あなたの上司の功績だ。採用した人間が優秀でないなら、それももちろんあなたの上司の責任だ。しかし、優秀でない人間の同僚とし苦労するのはあなただ。

そうならないように、いくつかの基本的なことは見抜くようにしよう。

能力の事実確認

能力の事実確認はとても難しい。彼のコードを見るくらいしか確認方法がない。そのためには彼のGithubのアカウントを教えて貰わないといけない(実際に採用試験にGithubアカウントを提出させる企業もある)。しかし、ほとんどの場合、コードを見ずに彼の能力を確認するしかない。

あなたは二つの質問を用意するとよい。一つはあなたが既に解決した課題について、彼の意見を聞いてみよう。もう一つは、あなたの使用する言語について興味のあるトピックを聞いてみよう、そしてそのトピックを何故取り上げたのかも。

最初の質問は、あなたが出した答えと比較してみよう。どちらか優劣かを考えるのではなく、自分の出した答えとの違いを比較してみよう。またどうしてその答えが良いと思ったのか、思考のプロセスも確認しよう。

次の質問は、興味の方向性と深さを確認しよう。その技術に向き合う熱量がどのくらいなのか、その熱量はあなたやあなたのチームの熱量と一致しているか。

新たな仲間を迎える

採用試験から2週間から1ヶ月後くらいに、あなたの隣の席に彼が着席するだろう。新しい同僚を迎え入れる上で、2つの秘訣を授けよう。

まずは彼を侮ったり逆に彼の出世を恐れることは無意味だ。それはあなたの上司が決めることで、あなた自身は関与することではない。

もうひとつは、彼の持つ技術に役に立つものがないか物色しよう。知りたい技術があれば、あなたのチームの仕事を教える代わりに、彼から技術を教えてもらう。放っておいても、彼はどのみちあなたのチームの仕事を覚えるのだから、彼から技術を教えてもらった方が得だ。それに何より彼とのコミニュケーションになる。

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